喫茶店





なぜ喫茶店のコーヒーは高いのだろうか?

一杯三百円はゆうに超える。

少しグレードを落としてチェーン店に行ってみても、やはり二百円近くは取られる。


格別うまいというわけでもない。

や、うまい店はうまいのだが、それに出会う確率は少ない。

大半の店はインスタントに近いと思う。


量も、せいぜい二、三百mlぐらいだろう。

同じ量を飲むなら、スーパーに行けばいい。

同じ値段で三倍は飲める。


ならば、喫茶店でコーヒーを飲む行為には損しかないのではなかろうか?

だがそんな事は有り得ない。

損しかないのならば客は寄り付かない。
そうなれば必然的に、喫茶店はこの世から姿を消すしかないのだから。



ということは、喫茶店の価値はコーヒー以外にあるに違いない。

それはなんだろうか?

喫茶店と聞いて浮かべるイメージは、静けさだ。

満席になることはあまり無く、気持ちの良いスペースを空けて、客が座っている。

みな、新聞や本を読んだり書き物をしたり、何かに集中している。

店内には小さめの音で音楽がかかり、静寂の気まずさから守ってくれる。

常に過ごしやすい温度に設定されており、快適な時間がそこにある。


なるほど、これならばなかなかに価値のあるものではないだろうか。


だが待てよ?

静かなのが好きなら家で黙っていればいいのではなかろうか?

エアコンをつければ快適に過ごせるし、飲み物が欲しければ、それこそスーパーで買い置きしていた方が経済的だ。

音楽も好きなのをかければいい。
控え目に小さくしなくとも、隣人に迷惑のかからない大きさなら自由だ。


いやいや、世の中には家族と一緒に暮らしていて、一人になれない人も大勢いるだろう。

エアコンの無い部屋に住んでいるかもしれないし、音楽を聞く機器を持っていないかもしれない。


いや、駄目だ。

それなら図書館にでも行けばいいのだ。

コーヒーが出ない以外は喫茶店とさほど変わらない。


それならば、いったい何のために?



そこで、ふと、思い立った。

もしや、私と同じ理由なのだろうか?

そうだ、そうに違いない。

喫茶店のコーヒーが高いのは必要経費なのだ。
そこで出会う可愛らしいウェイトレスさんと仲良くなるための。

そう考えていたのは私だけだと思っていたが、まさかライバルがたくさんいたとは…。

なるほど、先週までいた子がいなくなったのは、誰かが射止めたからだったのか。

これはのんびりしてはいられない。

さっそく三杯目のコーヒーを頼みに行こう。

ちょうど今レジにいるのは意中のあの子だ。

まだ顔見知りにもなっていないが、毎日通えばやがては覚えてくれるだろう。

出費は痛いが、これは必要経費なのだ。

となると、喫茶店のコーヒーは、必要経費でできていると言っても過言ではないな。




『あとがき』

たまにはこういうストーリーも何もない話をどうぞ!

まぁ、お金がない頃は喫茶店に行ってコーヒー頼むときに、高いなぁと思っていた実体験です。

『なぜ高いのか?』を、勘違いさせてみました。

一言感想もらえるとうれしく思います。

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