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コンコンッ 『こんにちわ~』 「開いてますよ~」 ガチャ ギィィィ 『しつれ~しま~す!』 「あ、え?」 『はい?』 「あれ、え~と」 『?』 「えらくちっちゃいですけどその服、死神…、さんですよね?」 『別にちっちゃくない死神さんです!』 「あ、あぁそうなの。 で…、何の用かなぁ?」 『死神の用なんて一つしか無いじゃないですか』 「えぇっ!俺死ぬの!?」 『はい! それはもう惨めに』 「惨めに!? 酷い!何とかしてよ!」 『なんともなりませんねぇ』 「え、な、何で死ぬの? やっぱり殺されちゃうの?」 『そうですそうです! やっぱ悪者はそうなる運命ですよね~』 (くっそ~! 四天王の奴ら、何が【任せて下さい】だ、結局やられるんじゃね~か!) 「い、いつ殺されるわけ?」 『もうすぐです』 「早いよ! もっと早めに来てよ! 心の準備とかあるのよこっちは!」 『すいません。 初めてなもんで段取りがよくわからなくて…』 (死神界も人手不足とは聞いてたけど、こんな小さい子まで使わなきゃならないのか…) 『心の準備が間に合わなかったら、私が頑張って時間を稼ぎますから!』 「いや、無理しなくていいよ。 相手も強いしさぁ。 死神とかこっち側の職業だから容赦ないよ、きっと」 『すみません』 「はぁ~、こんなことならもっと強い手下を最初にぶつけるんだったなぁ」 『どうしてそうしなかったんですか?』 「いやさ、 世界征服しようぜ~! って呼びかけたら、思いの外たくさん集まっちゃってさ。 領土を順調に拡大したまでは良かったけど、さすがに手下が多すぎて給料払いきれなくなっちゃった訳さ」 『ほむほむ』 「だけどリストラする訳にはいかないじゃん? そしたら人間側に寝返って困ったことになるかもしれないし…」 『確かに』 「だから、パワーバランスを調整して人間たちに少し倒されて、数を減らそうと思ったんだよ」 『わるものですね~』 「悪者なの。 魔王なんだから!」 『そうでしたね! 初仕事が魔王さんだなんて恐縮です』 「あ~、うん。 よろしくお願い…」 『はい、頑張ります! えっと、段取りの確認いいですか?』 「そんなのするの!?」 『はい。お願いします!』 (不安だぁ…) 「仕方ないなぁ。 どうしたらいいの?」 『ありがとうございます! とりあえず、勇者が来て、戦いますよね』 「いちおうラスボスだしね。 死ぬのがわかってても頑張るよ…」 『で、魔王さんがやられたら、この鎌でばっさり肉体から魂を切り離します! でないとずっと痛いので』 「あぁぁ、ずっと痛いのは勘弁だなぁ~。 なるべくベストなタイミングで頼むよ!」 『はい! 初めてだけど頑張ります!』 (いや、初めてとかいちいち言わなくてもいいんだってば。 不安になるから…) 「ちなみに、ずっと切り離されなかったらどうなるの?」 『さっき言ったじゃないですかぁ。 ずっと痛いままですよ』 「いや、そうじゃなくて。 切り離されなかったら魂は肉体に残ったままなんでしょ? じゃぁ、切り離されなかったら死なないって事?」 『はい、そうです』 「じゃぁ、痛いのを我慢すれば死なないでいられるんじゃないの?」 『そうならないように、私たち死神がいるのです。 【死】とは、全てのものに平等にあるもの。 それから逃れられないように、死神がいるんですよ』 「ふ~ん、そうなのかぁ」 (結構まともなこと言うじゃん…) 『あ、そろそろですね』 「え、何が?」 ガチャッ 「魔王、お前の悪事もここまでだ!」 『勇者の登場です!』 「この世界は、俺が守る!」 (はぁ~、俺の人生ここまでかぁ) 「よくぞここまで来たな。 だが、お前の命もここで終わりだぁ!」 『わ~、さすが、雰囲気出てますねぇ!』 (いちいちうるさいよ) 「どこを見ている、魔王」 「?」 『私は魔王さんにしか見えないのです』 「そうなの!知らなかったぁ」 「何をごちゃごちゃと。 さっきの言葉、そのままお前に返してやる」 「よかろう、さぁ、かかってこい!」 『魔王さん、気をつけて下さいね』 「え、なに」 グサッ 「戦いの最中によそ見とは」 『よそ見したら死ぬらしいんで…』 (いっ、いったぁぁぁぁぁ) 「ぁぁぁぁぁぁっ!」 「勝った…」 「早く、早く魂を切り離して!」 『はぁ~い。 いきま~す!』 プツン 「お、痛くなくなった」 『じゃ、冥界へ案内します…、あ~!』 「何、どうしたの?」 『冥界って、全身真っ黒じゃないと行けないんですよ…』 「うん、だから死神は真っ黒い服を着てるんでしょ」 『私…、間違えてシマシマの靴下はいて来ちゃいました』 「え~!何で、どうするのさ!?」 『えと、あの、その…、いったん帰って黒いのはいてきますね』 「俺、待ってたらいいの?」 『えっと、しばらくすると、また肉体に吸着しちゃうんですよ』 「え~! 聞いてないよ~!」 『帰ってきたらまた切り離しますので、頑張って下さい! じゃ!』 「あ、ちょっと~! ん、あ、何だか痛くなってきた…。 いだ、だだだだだっ! ちくしょ~こうなりゃヤケだ!」 「これで世界は平和になった」 「バカめぇ! あれで終わりと思ったか!」 「な、なにぃ!」 「真の力を見せてやるわぁ」 (あだだだだだっ! 早く帰ってこいよぉ、死神~!) 「俺は負けない、この世界のみんなのためにも!」 『ちゃんちゃん☆』一言感想もらえるとうれしく思います。