連続 ルーズリーフ一枚くらい小説

激烈家族 第1話〜朝食から始まる娯楽と誤解のメカニズム〜





僕は退屈な日常を日々願ってやまない中学三年生。
その原因は家族にあった。

朝7時。僕の家族は朝食を一緒に食べる。丸いテービルを一家4人囲む。
ご飯と味噌汁。薄れゆく伝統的な日本の朝食。

「いただきます」

僕の家はキリスト教ではないので、お祈りはしない。
少しだけ気楽に生を実感できる。


中央のお皿には、僕の大好きなたくあんが置かれている。
朝からあのポリポリを言葉のごとく噛み締めることができるなんて……生きててよかった!
我ながら安っぽい人生だと思う。

しかし、だ。

僕の人生なんてそんなものなのだ。きっと今日だって。
一番右端のたくあんをひとつ口へと運ぶ。


がしゃーん!


父のちゃぶ台返しによって僕の朝食が終了した。

「ケンカ売ってんのか一郎」
「一郎…って僕!?」

一郎は僕の名だ。しかし、何か怒らせてしまったようだ。いただきますの発音が悪かったのかもしれない。今日は自信があったのに。

「一郎。お父さんにごめんなさいをいいなさい」

なんだか釈然としないけれど、あやまることにした。

「ごめんなさい」

マヨネーズが飛んできた。

「ゴメンナサイだー?チキン野郎!おまえが何をしたか分かっているのか?」

判れば苦労はしていない。実の父親にチキン野郎とまで言われ心痛めている僕に追い討ちをかける。

「お父さんかわいそう…」

3つ下の妹が上目遣いに僕をにらむ。
僕が何をしたんだ?むしろ、僕はなにをしたっていうんだ!父さん教えてくれ!――とは怖くていえない。

「ごめんなさい……」

僕は涙を流してあやまった。そう悲しみの涙だ。
しかし、何が悲しいのかよくわからない。

「大丈夫、あなたは何も悪くないわ」
「お母さん…」

救いの言葉に心が少し楽になる。

「お母さん僕は――」

その先の言葉を母は手で制す。

「大丈夫よ。何を言わなくても…。ただ私は心配なのよ。この手帳が赤いスタンプでいっぱいになるのが」

と言って、残り1ページしかないプリクラ手帳を見せる。

「お母さん・・・?」
「これはおいた帳といってね、一郎が悪いことをした時に押すのよ」

ぺた ぺた ぺた

「あらあらあら。溜まっちゃたわ。お母さん少し買い物に行ってくるわね」と母。
「わたしもいくー」と妹。
「僕は学校へ・・・」

ガシッ!

「お仕置きの時間だ」

その日、僕は学校を休んだ。




☆おまけ☆

次号の【激烈家族】は【がんばれ山田くん】と題名がいきなり変わる可能性があります。
が。それはそれ、これはこれってことで、作中で登場する予定のキャラクターをいま、ちゃっちゃと説明いたします。

山田一郎。いわずと知れた主人公。
山田五郎。のちに生まれる山田家期待の赤ちゃん。
山田林檎。小学六年生の主人公の妹。
山田太郎。一郎の父親。ありふれた名前にありふれたパワー。
山田ステファニー。一郎の母親。天使と悪魔の異名を持つ。
山田ポン吉。一週間ごとに犬種が変わる不思議犬。
生徒A・B・C。一郎の通う学校の生徒。誰がAで誰がBでも可。

☆次回予告☆
『母と私とホスピタル』 お楽しみに。



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