連続 ルーズリーフ二枚くらい小説
激烈家族 第3話〜白髪おじいさん〜
・・・人というものが信じられなくなりました。
一郎です。母親と親父さらには妹。むしろ家族のせいで食事が喉を通らない日々を送り、栄養失調寸前の多忙な毎日。いかがお過ごしでしょうか。
前文のみで終わらせられれば、僕も作者も楽というものなのですが、誰かに怒られそうなので本編に行きたいと思います。
1月1日。年が明けた。
「誰か〜、誰か折らんのか〜?」
玄関を激しく叩く音に僕だけが反応する。
家族のみんなはこたつの中で仲良く寝ている。
「は〜い!」
元気よく引き戸を開けると、隣のおじいさんとおばあさんが二人並んで立っていた。二人とも白髪だ。
「あけまして、おめでとうございます!」
「おめでとう。元気にしとったね」
「?・・・はい」
「それはよかったばい」
おかしな老人だなぁ。これが素直な感想だ。
「どこの老いぼれだこのじぃさん、ばぁさんは!」
老人二人が僕を見る。
「えっ!今のはボクじゃないですよ」と首を横に振る。
すると、
「お父さん、誰、この薄汚れたしわのお化けは?」
「困りましたね。我が家はせまいので・・・」
と家族全員が揃っていたんだ。
母が父をチラリとみると、
「まかせろ雪乃。わしがいまにこらしめてやる!」
そう言って、一歩。前に踏み出した。
僕は衝撃を受けた。・・・とはいっても攻撃を受けたとかじゃない精神的にだ。
さらにいうと親父が隣に住むおばあさん達に拳を振るおうとしていることに対してでもない。
僕は、初めて母の名前を知ったのだ。
・・・。雪乃か。結構いい名前じゃないか」
が、次の瞬間には疑問が投げかけられた。
「ステファニー。本当においら達のことを忘れてしまったのかい?」
誰さ?ステファニーって。
「う、ぅぅぅ・・・」
突然。母が涙を流して膝を付く。
「母さん!?」
父が道を。あけた。
「どうぞ。ゆっくりしていってください。義父さん義母さん」
「なっ!?」
今の会話のどこにそれらしき話があったのか謎すぎる。
「おまえ達には話してなかったのかも知れんな。・・・雪乃は、雪乃という名前ではない」
ショックだった。母の名前を初めて知った瞬間、偽名であることがわかり、さらには日本人ではないかもしれない。という疑惑まで浮上してしまった。・・・ステファニーだし。
宗、これは俗にいう、ダブルショックというヤツに違いない。
「ステファニーか。いい名前だ」
本当にそう思っているのか親父。
「一郎。義父さんと義母さんと狭い家だが案内して差し上げなさい」
父は母のそばに立ち、
「さ、ステファニー」といって、手を差し出す。
父が去った後聞いてみる。
「あの・・・。母さんの、お父さんってことは・・・」
おじいさんとおばあさんが二人して頷く。
「おじいさん、おばあさん。お年玉をください!」
図々しい中学三年生だと思わないで欲しい。僕がこの家で生きていくにはお金が必要なのだ。
キラキラした目で二人をみつめる。
「はぁ〜?」
・・・。聞こえなかったのかな?
「あの、お年玉を・・・」
何度も言うと、催促しているみたいで恥ずかしい。・・・実際催促しているわけなのだが。
「はぁ・・・何を言っているのかおじいさんわからないね」
「んだんだ。耳が遠くてかなわんな〜」
・・・。この二人は・・・。
「だから!お年玉をくれ!」
僕は大声で言ってやった。
「痛て!」
父が僕を殴ったらしい。
「このばか息子が!」
もう一発殴られた。
「一郎。どうしたの、大声でさわいで?」
母が心配そうにでてきた。
「おや?もう食事の準備はできたのかい?リンダ」
・・・?リンダってなに?つうか誰だ?
「エリスや・・・いやアリシアだったかの〜?まぁ奥さん、息子の教育がなってないのではないのかの〜?」
エリス?アリシア?そして奥さん?!・・・このじいさんたち怪しすぎる。
「いっちゃ〜ん。大声出してどうしたの?」
妹が出てきた。
「おや、お嬢さんにはまだだったね。ほら、じいさんや」
そういって妹にお年玉を渡す。
「ありがとう。おじいさん、おばあさん。ボロぞうきん言ってごめん」
とびっきりの笑顔の妹だが口が悪すぎる。早く誰か気付いてやってくれ。
「と、ところで僕にお年玉は!?」
そういって思わず手を出してしまう。
「おや?おまえさんにはさっき渡さなかったかね〜?」
「え!?」
すると、家族みんなが僕に冷ややかな視線を浴びせる。
「二度もお年玉をもらおうとはいい度胸だな」
「いくら老いぼれたジジィとババァだからって足元みるなんて・・・最低!」
「久しぶりに再開した母と父に向かってなんて子なの!」
と家族みんなに言われた挙句、
「親不孝もんが・・・」
「意地汚い子だね・・・」
と老夫婦にも言われた。
「義父さん、義母さん。こんな親不孝者は放っておいて、こちらでお酒でも飲みましょう!」
「ささっ、こちらへ」
その時僕はみた。
おじいさんが父によって背中を押された瞬間。
頭の白髪が不自然に前のめりに動いた。――ズらか?!
・・・気付いたところでどうすることもできない自分が、笑っていた。
「いっちゃん頭おかしくなっちゃったのかな?」
気がふれたわけではない。
どうすることもできないこの現状に泣き、おじいさんの小さな弱みを見つけ、小ばかにしながら笑った。
このことがわかるのは僕とおじいさんだけであった。
第4話――白髪おばあさん――
・・・もういいよな。
☆次回予告☆
次回、激烈家族は愛と感動のスペクタクルロマンス。
動物愛です。どちらかといえば。好ご期待!!