出でよ!風林火山(外伝)





「ちょっとあなた大丈夫!?」
なつかしい声がする。
「もしもーし!生きてますかー?」
間違いない。栞の声がする。
士郎はベットから起きあがり目の前にいる女に抱きついた。
「え!?」
女は困惑した悲鳴にも似た声をあげながら、士郎を引き剥がそうとする。
「栞!俺だ士郎だ!おまえの兄様だ!」
「えーい!うっとうしい!」

ゴス!!

「栞…今日はすごく元気じゃないか。どうしたんだいったい」
「おのれは変態か!!私の名前はしずくっていうの!第一命の恩人に向かってその態度はなによ!!」
しずくと名乗った女性は顔を真っ赤にしながら怒っている。
ショートカットの髪の毛が元気さをより強調しているせいか、栞のような物静かな感じは微塵も感じられない。
「栞!私はおまえをそんな風に育てたおぼえはないぞ!兄様に向かってその口の聞き方はなんなんだ!?私はおまえの兄様としてとても悲しいぞ!」
「えーい!泣くな!このキングオブ勘違い野郎!」
しばしの沈黙…。
「私の…」
士郎がポツリとつぶやいたが。
「私の服がおかしい!?なんだこの服は」
白いブラウスに紺のセーターを着込んだ上半身に下はジャージをはいている。はっきりいっておかしい。
「あ、それ。あんたにあうサイズの服がなかったからお兄ちゃんの服を貸してあげたのよ!感謝なさいよ」
「…首のあたりがごわごわする。栞、ほかに服はないのか。この服はあわん」
そういってラジカセを置いてある小さなタンスの引出しを勝手に開ける。
「ちょっと!ここは私の部屋なんだから勝手にあらさないでよね!」
士郎は一番上の引き出しに入っていた古着のジーパンを手取って、
「これは小さいな…」
「当たり前でしょう!」
士郎は二番目の引き出しに手をかける。
「あ…そこは――」
しずくが止めるよりも早く、士郎は小さく丸めてあるピンクのパンツを広げ――
「これは――」なんだと聞くよりも早く、チョップが跳ぶ。
「――!!この、キングオブ・変態!!」
ガチャ…
「しずく〜、俺いまから…」
しずくの兄、雅也は部屋に入る寸前で止まった。
「………」
「………」
「………」
三人とも無言。
士郎はパンツを広げたまま言った。
「おまえは誰だ」
「俺のセリフだ、この野郎!俺のかわいい妹に手を出しやがって!」
「名前を聞いている。ちなみにこいつは俺の妹だ。勘違いも甚だしい!」
「こっちのセリフだっつうの!!」
「勘違いはあんたでしょうが!!」
二人同時に突っ込む。

しばしの沈黙。

そんな中、一番最初に口を開いたのは――

「…栞。この服はやはり頭なのか?」
頭にパンツをかぶる士郎。
「いやああああああああああああ!!」
「な、なんてうらやま――」
次の瞬間。雅也と士郎はほぼ同時に床に突っ伏す!
「パンツ返せ!」しずくの最後の一言はやけに心に残る一言だった。





あとがき

やる気があるうちに終わらせてしまえ!みたいなノリで書き上げた。
推敲するつもりはないですがこういうテンションのお話は大好きだったりします。
こっちはこっちで改めて書き直したいと思っていたりするが・・・
(こういうのUPするから小説よりもポエムUPしてくれって言われるんだろうな〜orz)

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